花粉症について
スギやヒノキ、ブタクサなど、特定の植物の花粉が原因で生じるアレルギー性鼻炎です。
東京都は、都内の花粉症推定有病率や花粉症患者の予防や治療に関する情報を把握する花粉症患者実態調査を定期的に行ってきています。東京都花粉症患者実態調査報告書(2018)によると、2017年に行われた第4回調査では都内のスギ花粉症有病率は48.8%と報告され、実に半数近くがスギ花粉症であると示されました。スギ花粉症推定有病率は、1983年から数年をかけて実施された第1回調査が10.0%、第2回調査(1996年)が19.4%、第3回調査(2006年)が28.2%となっており、大幅な増加傾向にある事が分かっています。
また、第4回調査結果では、小児と高齢者の罹患率の増加も指摘されています。
原因となる植物
ヒノキ科(スギ・ヒノキ)
日本の花粉症はスギ花粉を原因としたものが全体の約8割を占めています。スギの花粉飛散時期は場所や年によって変わりますが、九州で2月上旬、関東で2月中旬、東北地方で3月上旬が飛散開始の目安となっており、飛散シーズンは2か月ほど続きます。飛散量は天気の影響を大きく受け、晴れていれば増え、雨の時は減ります。
ヒノキはスギよりも1か月半程度遅れて花粉の飛散がスタートします。スギとヒノキの両方にアレルギー症状を起こす、ヒノキ科だけでなく他の科の植物の花粉にもアレルギー症状を起こすなど、複数の花粉アレルギーのあるケースもあります。
カバノキ科
(シラカバ・ハンノキ・ヤシャブシ)
北海道にはスギが少ないのでスギ花粉症の発症は少ないのですが、カバノキ科の花粉による花粉症を発症する方が多く、北海道で4~6月に花粉症の症状を起こした場合は、カバノキ科の花粉症が疑われます。
近畿地方にはカバノキ科のヤシャブシが多く、1~4月に症状を起こした場合にはヤシャブシによる花粉症の可能性があります。
イネ科
イネ科の植物の花粉症も比較的多く、代表的なものに空き地や土手、河川敷などに生えるカモガヤがあります。5~8月の初夏から夏にかけて症状を起こす場合には、カモガヤによる花粉症が疑われます。
その他(ブタクサやヨモギなど)
ブタクサは米国からの帰化植物で空き地などに繁茂し、8~9月に花粉を飛散して花粉症の原因になります。日本に昔からあるヨモギもブタクサから半月遅れくらいの時期に花粉症を起こす事がある植物です。ブタクサもヨモギも都内では減少しており、ブタクサやヨモギによる花粉症も減ってきていると指摘されています。
花粉症の症状
花粉症の4大症状
- くしゃみ
- 鼻水
- 鼻詰まり
- 眼の痒み
くしゃみ
花粉の飛散量が多いと鼻が絶えずムズムズして、連続したくしゃみを何度も繰り返します。風邪のくしゃみは1週間程度で自然に治まりますが、花粉症では飛散シーズン中ずっと続きます。
鼻水
サラサラと透明で水のような鼻水が出ます。出てくるまで気付かない事も多く、いきなり鼻から垂れてきてしまう事があります。
鼻詰まり
起きている間は鼻をかんで解消できますが、就寝時にはそれができず強い鼻詰まりになる事がよくあります。呼吸しにくい事で目覚めてしまうなど睡眠の質が低下し、日中の集中力低下やだるさなどを起こす事もあります。
眼の痒み
花粉が眼に入って強い痒みの症状を起こす事もよくあります。また、涙が増えるケースもあります。
その他の症状
喉に花粉が入って乾いた咳が続き、悪化して気管の腫れや痛み、息苦しさを生じる事もあります。
また、皮膚症状として肌の痒み、湿疹、肌荒れを起こしたり、耳の中に花粉が入って耳の痒みを起こしたり、微熱や全身倦怠感などを生じる事もあります。
花粉症の検査
鼻鏡検査
鼻腔に超極細の内視鏡スコープを挿入し、鼻粘膜の腫れや閉塞などを詳細に観察してアレルギーの重症度を評価し、状態を正確に把握する事でより適切な治療につなげます。
血液検査
原因となるアレルゲンを調べるために行います。また、スギやヒノキの花粉のIgE抗体価も測定できます。
皮膚テスト
皮膚に小さな傷をつけ、そこにアレルゲンとなる原因抗原の入った液体を滴下し、腫れが起こるかどうかを観察する検査です。
体内でアレルゲンによるアレルギー反応が実際に起こっている事を確認できます。
花粉症の治療
薬物療法
花粉症治療で最も基本となる治療法です。使われるお薬には、様々な効果や作用を持ったものがあり、症状やライフスタイルなどにきめ細かく合わせた処方が可能です。
初期治療
花粉の飛散シーズンより前に治療を開始する事で、鼻粘膜が飛散シーズン中に知覚過敏を起こさずに過ごせる可能性が高く、その場合、飛散シーズン中の症状が軽減され、症状のコントロールがしやすくなります。初期治療を希望される場合には、早めに受診してください。
免疫療法
微量のスギ抗原を体内に徐々に入れ、体を慣れさせて体質の改善を目指す根治的治療です。長期間、治療を継続する必要がありますが、高い効果を期待できます。ただし、改善効果をほとんど得られない可能性もあります。日本では2014年から安全性が高く手軽な舌下免疫療法が導入されています。
重症花粉症に対する注射治療(抗IgE抗体ゾレア®の皮下注射)
スギ花粉症による症状が強く、内服薬や点鼻薬、点眼薬でも症状が改善しない重症患者さんに対する治療です。月1~2回程度の頻度で皮下注射することで症状を大幅に改善させます。対象は12歳以上で治療までに数回の受診が必要です。また、血液検査でスギ特異的IgE値がクラス3以上、総IgE値が30~1500IU/mlが適応になります。投与量と投与間隔は体重と血清総IgE値で決定します。興味のある方は医師に相談してください。
日常生活でできる症状の予防
花粉症は、アレルゲンとなる花粉に触れる機会を減らせば、症状の緩和が見込めます。
お薬による治療だけでなく、日常生活を見直す事も症状の緩和に役立ちます。
外出時
晴れた日中には花粉の飛散量が大幅に増加し、ピークはお昼の12時から午後3時までです。晴れた日のピークの時間帯にはできるだけ外出を避けてください。また出かける際には、花粉に触れる量を極力減らすためのマスクやメガネ、帽子、そしてツルツルして花粉を払い落とせるコートなどを身に付ける事が有効です。
帰宅時
玄関前で帽子やコートについた花粉を払い落とし、玄関に入ったらコートや帽子を脱いでください。リビングや寝室など、長時間過ごす場所に花粉を持ち込まない事が重要ですので、脱いだコートや帽子は玄関で袋の中に入れてしまうようにしてください。
洗濯後の干し方
飛散シーズンには洗濯ものや布団を外に干さずに乾燥機などを使って乾かしましょう。
外に干した場合には、部屋に入れる前によくはたいて花粉を落とし、部屋に入れたらすぐに掃除機をかけるようにしてください。
換気の方法
晴れている日中の換気はやめましょう。また部屋の換気口にフィルターをつけ、空気清浄機を稼動させて、室内の花粉をできるだけ減らすようにしましょう。
掃除の方法
花粉はとても軽く、すぐに舞い上がって長い時間浮遊してしまいます。濡れた雑巾でそっと拭き掃除をしてから掃除機をかけるようにしてください。カーテンや布ソファなども掃除機をかけて花粉を除去しましょう。
マスクの着用
鼻に入る花粉の量を減らし、鼻の湿度を保つ事で症状の緩和に役立ちます。隙間がないよう、しっかりフィットさせる事が重要です。
生活習慣の改善
アレルギー反応の強さは体調にも左右されます。自律神経のバランスを整えるためには、十分な休息や睡眠をしっかりとる事が重要です。また、朝、日光を浴びると体内時計がリセットされて生活リズムを整えやすくなります。栄養バランスのとれた食事を心がけ、香辛料や飲酒・喫煙など刺激の強いものを過剰に摂取しないようにしてください。軽い有酸素運動を続ける事も血行や代謝の改善に役立ちます。